お話を伺った方株式会社ALiNKインターネット執行役員サービス統括部 部長森島 昌洋 様https://www.alink.ne.jp/一般財団法人 日本気象協会及び株式会社ALiNKインターネットが共同運営する天気予報専門メディア『tenki.jp』。年間59億PVのトラフィックを誇る巨大メディアであるにもかかわらず、長年ある“矛盾”が存在していました。「毎日使われているにもかかわらず、サービス名を覚えられていない」この課題を解決するために、 ALiNKインターネットが選んだ戦略は、“ブランドを意識してアクセスしてもらうサービス”をつくるための習慣化マーケティング、そしてその手段としてのポイントシステムの活用でした。今回、同社がGMOリピータスを採用し、『tenki.jp ポイントモール』を立ち上げた狙いとその背景を、事業プロデューサーの森島昌洋氏に伺いました。「5,000万MAUなのに、サービス名を知られていない」ジレンマ―― まずは『tenki.jp』の現状と課題を、どのように捉えていたのか教えてください。森島氏:私がプロデューサーに着任してすぐ、ユーザーリサーチを実施しました。その結果を見て驚いたのは、サービス規模と認知度のあいだに大きなギャップがあったことでした。『tenki.jp』は、台風や豪雨の多いシーズンには5,000万MAU(月間アクティブユーザー数)を超えることもある、日本でも有数の規模を誇るサービスです。ところが、実施したユーザーリサーチでは「『tenki.jp』を知らない」「使ったことがない」という回答率が、想像したよりも高かったのです。そのいっぽう、サイトやアプリの画面を見せると、「知っています」「これ、いつも使っています」という回答が返ってきます。使われているのに、名前が覚えられていない。このズレには相当なインパクトがありました。―― 原因はどこにあったのでしょうか。森島氏:ひとことで言うと、「SEO(検索エンジン対策)が強すぎたことの裏返し」です。「東京 天気」「明日 大阪 雨」など、一般的な天気に関するキーワードで検索した際、多くの場合『tenki.jp』のページが上位に表示されます。お客様が検索結果をクリックし、表示された天気予報を確認すると、満足してサイトから離脱する。これは、日本気象協会さんが提供する高精度な天気予報と、当社が企画・設計するUXにより、必要な情報にすぐたどりつけるためです。しかし、あまりにもスムーズすぎるので、かえって「『tenki.jp』を見た」ことが頭に残りません。 逆説的ですが、満足できる情報を簡単に手に入れられたお客様に残るのは、「明日は午後から雨が降るらしい」という事実であって、「『tenki.jp』で調べた」という記憶ではありません。これは、オフィスの箱ティッシュの銘柄を覚えていないことと同じです。「そこにある便利なもの」として日ごろから使われており、またそのクオリティにも満足しているものの、ブランドとしては認知されていない。『tenki.jp』も同じような課題を抱える「コモディティ」なのだと痛感しました。王道の「広告投下」も「圧倒的精度」も選べない現実―― ブランド認知を上げる方法としては、「広告」か「プロダクトの圧倒的な差別化」が王道だと思いますが。森島氏:確かにその2つの手段は王道ですが、どちらも現実的ではありませんでした。『tenki.jp』は気象・防災情報のドメインに位置しますが、この領域では、大企業や有力サービス、あるいは公的機関のサービスが、寡占状態でひしめき合っています。マス広告でのブランディングで圧倒することはとても困難ですし、仮に実施しても、消耗戦になることは目に見えていました。いっぽう、コアコンピタンスである予報精度での差別化も、現実的にはシビアです。前述のとおり、『tenki.jp』は日本気象協会さんの予報データを活用しており、信頼性には自信があります。しかし、競合各社さんもそれぞれに工夫されているなかで、誰が見ても「『tenki.jp』だけ、ダントツで当たる」と感じてもらうほどの差をつけるのは難しい。王道の手法であるこの2つが取りにくい状況で、「どうやって『tenki.jp』というブランドを意識して選んでもらうか」を考える必要がありました。だからこそ“毎日見る理由”をつくる──ポイントを使った習慣化設計―― そこで「ポイント」という打ち手に行き着いたわけですね。森島氏:はい。出発点はブランディングです。単にロゴを見せる回数を増やすだけでは、ブランドはお客様の記憶に残りません。いかにしてお客様の「習慣」の中に入り込めるかが重要だと考えました。ポイントサービスを利用するお客様は、最初は「お得だから」という動機で始めることが大半ですが、利用を続けるうちに「今日ももらえた、ちょっと嬉しい」というマインドに変わっていきます。 最初:お得だから使ってみる 継続:毎日貯まると嬉しい 定着:『tenki.jp』を自然と開く習慣が生まれるユーザー体験として、このような3段階のファネルを作ることができれば、天気予報のようなコモディティでも、しっかりブランドとして意識してもらえると考えました。『tenki.jp』を使うたびにポイントが貯まり、毎日アクセスすれば少しずつ得をする。この小さな積み重ねを体験していただくことで、お客様に“毎日天気予報を見る“行動を自然と続けていただけるはず。天気予報は本来“必要なときだけに見る”もの。そこに“毎日訪れる動機”を加えることで、「検索でたどり着くサイト」から「指名でアクセスされるサービス」へと進化させようとしたのです。そのための象徴的な施策のひとつが、『毎日お天気チェック』です。今日明日の天気予報をチェックするだけで、1日に3回設定された対象時間ごとにポイント(※1)を獲得できる機能ですが、これにより「同じ天気予報でも、せっかくなら『tenki.jp』で見よう」と思っていただけるきっかけを、日常生活の中に溶け込ませることを狙いました。また、私たちは、ポイント施策を単なるマーケティングだけに留めるつもりはありませんでした。天気予報は、服装や雨具の準備など、明日をより良く過ごすため常に見ていただきたいものですし、台風の接近時などには、安心・安全のために必ずチェックしてほしいメディアでもあります。このようなサービスの使命を果たすためにも、ポイントを通じて「毎日こまめに天気や防災情報に触れてもらう習慣」を後押ししたいという、強い願いも持っています。『毎日お天気チェック』は、『tenki.jp』で天気予報をチェックするだけで、1日に3回設定された対象時間ごとにポイント(※1)を獲得できるサービス(※1)『毎日お天気チェック』のポイントは「コイン」単位で付与され、100コイン=1ポイントとして換算されます。PV依存の事業構造から脱却──UU起点の収益モデルへ―― もう一つ、事業構造上の課題もあったと伺っています。森島氏:『tenki.jp』の売上の大半はネットワーク広告、つまりインプレッションに依存したモデルです。PV(ページビュー)× 単価 という世界ですね。このモデルによる収益は、立ち上げから十数年、おかげさまで順調に成長していきましたが、ここ数年で鈍化傾向があるのは事実です。これは、多くの情報メディアが抱えている課題でもありますね。「PVを増やす」「広告枠を増やす」だけでは、これまでのような伸びを維持できない。これは事業メンバー全員の共通認識でした。そこで、「PV(Webページがブラウザに表示された回数)ではなく、 UU(一意なユーザー数)で稼げるモデルに変えていく必要がある」と考えました。前述のとおり、『tenki.jp』は、すでに膨大なユーザー数を抱えています。プロデューサーとしては、このポジションを活かし、インプレッションビジネスからコンバージョンビジネスへの転換、つまりお客様の行動に紐づいた収益モデルへのシフトに挑みたかったのです。とはいえ、一気にコンバージョン特化の設計に切り替えるのも、サービス規模を考えると現実的ではありません。そのため、既存の利用シーンから、「コンバージョン地点」への橋渡しをする手段として、ポイントサービスがフィットすると考えました。ポイントをフックにしたコンバージョンビジネスを設計すれば、媒体構造やUXを大きく変えることなく、自然なかたちでお客様の利用を促し、“毎日アクセスしたくなるコンテンツ体験”をつくりながら、新たな収益ポートフォリオを増やすことができる。そのような考えから、ブランディングとビジネスモデル変革を同時に進める打ち手として、ポイント導入を位置づけています。なぜ内製ではなく、GMOリピータスを選んだのか―― ポイントサービス導入にあたり、「自社開発」という選択肢もあったのでは。森島氏:選択肢として検討はしましたが、すぐに現実的ではないと判断しました。同じネットビジネスでも、天気予報とポイントサービスでは、エンジニアリングの思想は大きく異なります。ALiNKインターネットが得意とするのは、「大量のトラフィックに耐えられるよう、天気予報や防災情報を正確かつ高速に配信する」こと。ところがポイントシステムでは「ユーザーひとりひとりのトランザクションを正確に管理する」ことが求められます。両者では、必要な技術も運用体制も異なります。また内製するとしても、開発に数ヶ月〜1年の期間と多額の初期投資が必要になり、その後の運用負荷も重くなります。これでは新しい収益の柱を作るどころか、既存事業のリソースを食いつぶすことになってしまいます。―― そこで、OEM提供を行っている事業者を比較検討されたわけですね。森島氏:はい。複数の企業さんにお声がけしましたが、自社ポイントメディアを優先し、外部提供には消極的だったり、OEMというより「大口アフィリエイター」として扱われている印象を持つ企業さんもありました。GMOメディアさんは、自社で大規模ポイントメディアを運営してきた実績があるだけでなく、そのノウハウをパッケージ化してOEM提供することに本気で取り組んでいる、と感じました。技術だけでなく、ポイントを軸にした体験設計まで一緒に考えていただいた点や、単なるマーケティングや収益化にとどまらず、私たちがお客様に提供したい価値観についても真剣に議論してもらえた点が、GMOリピータス採用の決め手になりました。私たちに必要だったのは、単に「仕組みを貸してくれる」ベンダーではなく、「『tenki.jp』にポイントをどう組み込めば、毎日見たくなる体験をつくれるのか」「どのようにすれば、事業収益が向上する仕組みになるのか」「安心・安全のため、『tenki.jp』を見る習慣づけをどうやったらできるのか」を、一緒に考えてくれるパートナーでした。これらの思いに最もこたえていただけたのがGMOメディアさんであり、最もフィットしていたのがGMOリピータスでした。ポイント導入後に見えた行動変化―― ポイントの導入後、お客様の行動にはどのような変化があらわれましたか?森島氏:企画提案の当人である私も、正直なところここまでわかりやすい変化が出るとは思っていませんでした。『tenki.jp ポイントモール』を公開してから、KPIが目に見えて変わってきたのです。たとえば新規会員登録を例に取ると、導入後の伸びは非常に顕著で、「お得だから登録する」という初期行動の仮説が、期待どおりに証明できたと感じています。新規会員登録の増加導入直後(2025年6月16日~)は、導入前の日平均の約500%増に跳ね上がる導入翌月の登録数は、導入前の月平均と比べ約130%増に行動量の向上(定性的)『毎日お天気チェック』利用者のアプリ起動率は、非利用者の約5倍同じく、1人あたり月間セッション数は約2倍1人あたりPVも約4倍と、サイト内回遊も増加森島氏:これらの成果だけを見ると「指標が一気に伸びた」と言えるのですが、サービスにとって本質的に重要だったことは「行動の質」に変化が起こったことのほうです。具体的には、『毎日お天気チェック』を動機として「もともと天気を確認していたユーザー」が継続的にアクセスしてくれるようになったこと。そして、閲覧するコンテンツの数も増えたこと。これはポイントが単なるインセンティブではなく、“毎日アクセスする習慣のトリガー”になっている証拠だと考えています。―― 天気を見るついでにポイントを獲得して、そのまま回遊するケースも増えているとか。森島氏:そのとおりです。明日の天気予報だけを見て離脱していた方が、「ポイントが付くなら毎日ログインしよう」と思ってくれる。検索エンジン経由ではなく、アプリをダウンロードしてくれる。そこから自然にサービス内の行動量が増えるんですよね。“天気を調べて終わり”だった行動が、“せっかくだから今日もポイントをもらっておく”に変わる。そしていつの間にか、それが毎朝、毎日のクセになりつつある。『毎日お天気チェック』をはじめとしたポイント施策の積み重ねが、この“自然と毎日アクセスしたくなる習慣づくり”につながっていると実感しています。「毎日の天気予報が、毎日の小さな楽しみになる世界」へ―― ポイント導入によって、今後どのような世界を目指しているのでしょうか。森島氏:天気予報は日常生活のインフラです。「明日傘が必要なのか」「洗濯物は外に干せるか」「台風がいつ来るか」──そのために天気予報や防災情報を提供すること、結果としてお客様の態度変容を起こすことが、私たちの社会的使命です。それを実現するために、ポイントという「ちょっとした楽しみ」をサービスに加えることで、『tenki.jp』のブランドを認知していただき、能動的に選んでもらえる毎日アクセスする習慣が生まれて、より良い行動の手助けになる「『tenki.jp』だから使う」と思っていただける結果として、事業収益の拡大、多角化が実現できるそのようなシナリオを実現していきたいと考えています。ブランディングの観点では、「なんとなく検索してたどり着くサイト」から、「サービスを指名して使ってもらえるサービス」へ。事業の観点では、「インプレッションに依存するメディア」から、「お客様の行動と感情を軸に収益が生まれるプラットフォーム」へ。ポイントは、その両方をつなぐ媒介だと思っています。何よりも、このような取り組みにより、多くの方が天気予報や防災情報を気にする、常にチェックするような状態になる。安心を社会に届け続けるという、事業本来のパーパスを果たすためにも、重要な施策と位置づけています。―― 最後に、同じような課題を持つメディア事業者に向けて、メッセージをお願いします。森島氏:日常的に使われているのにサービス名を覚えてもらえない。PVはあるのに事業の伸びしろに限界を感じている。もしそうした課題をお持ちなら、ポイントを軸にしたマーケティングは有力な選択肢になりうると考えています。特にGMOメディアさんのように、仕組みだけでなく、運用やマーケティングのノウハウまでセットで提供してくれる、メディア側の事情を理解しながら伴走してくれる、そういったパートナーと組むことで、自前では難しいスピードとクオリティで新しいチャレンジができるはずです。天気予報のような、一見コモディティに見えるメディアでも、ポイントによってお客様の感情を動かすことができたのです。「毎日見る」メディアだからこそ、その日常に少しでも楽しさや嬉しさをお客様に感じていただくことが大切になるのでは、と考えています。『tenki.jp』では、その一歩を、GMOリピータスとともに踏み出したところです。インタビューを終えて「未来の予定を晴れにする」──その理念のもと、日々の暮らしに寄り添うサービスを追求し続けるALiNKインターネット様。ポイントという小さなきっかけが、ユーザーとの“新しいつながり”を生み、毎日アクセスしたくなる体験を育てていました。これからもGMOリピータスは、『tenki.jp』の挑戦と“日々アクセスされるサービスづくり”と価値創造を全力でサポートしてまいります。森島様、本日はありがとうございました!関連サイトURL◆『tenki.jp』https://tenki.jp/◆『tenki.jp ポイントモール』https://pointmall.tenki.jp/